アジア館・南米館担当:武田
今日は世界キツネザルの日(World Lemur Day)です。
ということでちょっと難しいですが、キツネザルの歯の話。霊長類は多種多様だということを知っていただけたらと思います。
ちょっと頑張ったので読んでいただけると嬉しいです(笑)
こちらのワオキツネザルの下の歯に注目してみてください。
拡大してみると、
下の前歯6本が上向きではなく、前向きに生えているのがわかりますか?
他の写真でもう一度。
さらにもう1枚!
これでお分かりいただけましたでしょうか?
ワオキツネザルだけでなく、
わかりにくいですがクロシロエリマキキツネザルも同じように下の前歯6本が前向きに生えています。
現在ビジターセンターで開催されている 特別展「骨から読み解く霊長類のくらしと進化 -霊長類骨格博物館-」 で展示中の骨格標本の中にワオキツネザルやクロシロエリマキキツネザルの頭骨があり、
生体よりも簡単に、下顎の前歯6本が前向きに生えていることを確認できます。
この歯の構造は「櫛歯(くし歯)」と呼ばれ、他のキツネザルも基本的に「くし歯」を持っています。

キツネザルの仲間の頭骨と下顎骨
また、この「くし歯」を持っているのはキツネザル仲間だけではありません。
実は、霊長目 曲鼻亜目(こちらの図の上の分岐側)に属する霊長類(キツネザル下目とロリス下目)でのみ見られる構造となっていて(※アイアイなどくし歯を持たない種もいます)、
ロリス下目に属するレッサースローロリスも「くし歯」を持っています。

わかりにくいですが「くし歯」になっています。
そしてこの「くし歯」はグルーミング(毛繕い)などに役立っているのではないかと考えられています。
たしかに日本モンキーセンターで暮らすワオキツネザルやレッサースローロリスは手ではなく口(舌など)でグルーミングを行うので、その説にも納得ができます。
キツネザルとロリスは外見上、そして生態的にも異なる点が多いのですが、骨を見るとこのように意外な共通点も見つかります。
キツネザルに関するごく一部の話でしたが、キツネザルって面白くないですか?
面白いですよね?ね?
もしもどこかでキツネザルを見る機会があればぜひ歯にも注目してみてください!

クロシロエリマキキツネザルのクミン(くし歯の撮影失敗写真)
肉眼で見るのは至難の業ですが…。