バックヤード&アフリカセンター担当:藤森
2021年2月5日、ヤクシマザルのタチバナが天国に旅立ってしまいました。
あまりに突然の訃報に驚きを隠せませんでした。

きりっとくりっとした目が特徴的なタチバナは、どこか愛らしい顔をしていて、私は心の中でタチバナ嬢と呼んでいました。
実際に呼ぶときは短く「たちぃー」と呼び、呼ばれるときは食事だ、と知っているタチバナはすーっとごはんを食べに近づいてきていました。

タチバナ嬢はもともとはモンキーバレイにいたようですが、10年ほど前に視力が低下し、バックヤードにやってきたようです。その後も肝機能が低下するなど、ちょくちょく治療をしていた記録がありました。
2019年の春から同じヤクシマザルのヒミズ(♂)と一緒にくらすようになり、その数か月後に、私とタチバナのおつき合いが始まりました。
(ヒミズ↓)

私がバックヤード担当になったとき、タチバナは体調不良で病院に入院していて、私の最初の仕事は、回復したタチバナをヒミズのもとに戻すことでした。
マカクとのおつき合いも初めてなのに、早々に群れ戻しなんてハードル高っ!!と思ったのをよく覚えています。しかも、ヒミズは人工保育で育ったこともあってか、自然哺育の個体に比べて少し動きが読みにくく、荒っぽい面もありました。
前任のちぐねぇに相談したら、仲よしだから大丈夫!と言われたものの、不安で不安で、鏡味さんや慧さんという、プロ中のプロにフォローに来てもらい、これ以上ないだろうってくらい万全な体制のなか合流させました。
結果はちぐねぇさまの言うとおり、なんの問題もなくふたりは合流しました。
目が見えないタチバナは手さぐりで運動場を確認しつつ、定期的に声を出してヒミズを呼んでいました。ヒミズは周りにいるスタッフたちを忙しそうに見つつも、呼ばれるたびに急いでマウントしに行っていた光景は、今でも思い出せるほど印象的でした。
タチバナとヒミズは本当になかよしで、よくグルーミングをしあっていました。 人に対してぐいぐいくるヒミズですが、タチバナには比較的優しくて、タチバナが横になると、すかさずそばに行きグルーミングをしていました。
(手前タチバナ、奥ヒミズ)

ヒミズの荒っぽいディスプレイに迷惑そうにするタチバナの姿もよく見ましたが、グルーミングをしてもらっているときは、とても気持ちよさそうでした。
(左ヒミズ、右タチバナ)

目が見えない分、頻度は下がりますが、タチバナもちゃんとヒミズにグルーミングしていました。
奥で変な顔をしているのがタチバナです(笑)

グルーミングしてもらっているヒミズは超まったり顔。

私の勝手な印象ですが、タチバナがグルーミングしているときは
タチバナ(奥):してあげている
ヒミズ(手前):してもらっている

ヒミズがグルーミングしているときは、
タチバナ(手前):させてあげている
ヒミズ(奥):させてもらっている という空気が流れていました。
あくまで勝手な印象です(笑)

メスだし、高齢で力が弱い上に目も見えないなんて、ヒミズにしいたげられそう、なんて最初のうちは思っていましたが、タチバナはタチバナで意外とうまいことやっていて、野生動物の逞しさを教えられました。
2月5日、当時アフリカセンター担当だった私は、昼過ぎの空いた時間にふら~っとタチバナに会いに行きました。
少し前にも体調を崩していたので、その日担当だったまーさんや武田くんと一緒に様子を見ていました。
そのときは格子をつたって地面に下りたり、水を飲む姿も見せてくれたので大丈夫そうだね、と話していたのですが、その2時間後、亡くなったという無線が突然入りました。
最初に発見したまーさんによると、だるまストーブのそばのタチバナの特等席だった台の上で横になっていて、いつものようにヒミズがグルーミングをしてたそうです。ただ声をかけても微動だにしなかったため、すぐに獣医さんを呼び、その場で死亡が確認されたとのことでした。
死因は多臓器不全とのことでした。もともとの持病と年齢から考えれば、おかしなことではありませんでしたが、急すぎてとてもすぐには受け入れられませんでした。
苦しんだ様子はなかったとのことで、ヒミズにグルーミングしてもらいながら天国に行けたであろうことだけが救いです。

タチバナのいない環境にまだ慣れず、運動場の前に来るとついつい「たちぃー」と呼んでしまいそうになります。とてもとてもさみしいです。

タチバナ、今までありがとう。