【Tenagram】ジェニファーと注射針

今回は、モンキーセンターでくらすシロテテナガザルの偉大なる母、ジェニファーのトレーニングについてのお話です。

 

 

先日、インフルエンザの予防接種にいってきました。注射が痛い時とそうでもない時の違いってなんなんでしょう。痛い時は露骨に顔に出してしまい、いくつになっても注射が怖い奥村です。こんにちは。

 

さて、7頭の産歴があり、現在は息子のジョージとくらしているジェニファー

 

1985年に来園という記録はありますが、当初の年齢は不明。

最低でも37歳以上と高齢です。

 

そんなジェニファーですが、去年の春に陰部からの不正出血がみられました。

2017年より繁殖制限のため経口避妊薬を与えていたのですが、効果が得られなくなってきたのか、生理出血以外での原因による疑いもあり、検査をすることに。

 

高齢ということもあり、検査時の麻酔導入の負担を少しでも軽減できるようにと、当時の担当者がトレーニングをおこない、手打ちの注射で1度は麻酔をかけることに成功しました。

 

検査の結果、不正出血の原因は卵巣嚢腫というものが可能性として考えられました。そのため、それにも効果が期待される注射を打って治療をおこなうことになりました。

 

その注射は経口避妊薬のように毎日飲む必要がないかわりに、定期的(今回は2回目以降は半年毎)に注射する必要がありました。また、薬液が少しトロッとしていて無麻酔で注射することが容易ではない代物です。

 

2回目の注射は検査の約2週間後ということもあり、担当者による手打ちでの麻酔の注射は困難だったようで、獣医さんによる吹き矢での麻酔となりました。 

 

3回目は去年の冬、それまでに不正出血もなく卵巣の状態も維持できているようでした。麻酔の導入はやはり手打ちの注射は難しかったようです。

 

4回目は今年の6月に実施されました。検査もおこなったのですが前回から卵胞が大きくなっており卵巣腫大は抑えられていないことがわかりました。

 

摘出には開腹の手術が必要になります。高齢のためその手術にジェニファーが耐えられない可能性もあるため、注射による治療を続け経過をみることとなりました。

 

この4回目の検査の後くらいから、奥村はテナガザルの担当するようになりました。

 

そこで、なんとかその薬液の注射を無麻酔でできないものかなと思い、トレーニングを再開することにしました。

 

とはいうものの、1回目の注射によるトラウマもありそうで、前担当者からも「手打ちは無理」のお墨付きをもらっていたジェニファーです。

 

まずは、関係性を築いていくことから始め、同居中のジョージと離れてもらい、注射を打てる場所にジェニファーだけを誘導する必要があります。

 

 

夏の間には、そんな『注射を打てる場所』に誘導することができるようになりました。

 

そこから、注射器の容器(シリンジ)をみてもらい、慣れてもらうことにしました。

 

最初は「それ注射器なの?」てくらいの大きめなシリンジのサイズからはじめました。また、「これは悪いものじゃないよ」というメッセージも込めつつ、シリンジにポカリなどをいれて、それで飲んでもらったり。

 

慣れてきたら、段々とサイズを本番で使うものまで小さくしていき、先端には針ではなく、木の枝などをつけて、ツンツンしていきます。

 

そんなことを、できる日は毎日続けました。

 

ジェニファーにはそのトレーニングによるストレスがかからないように、場所へ誘導する際も、シリンジを見せる際も、ツンツンする際も、乗り気な時だけ取り組んでもらいました。

 

そして、いよいよ先月注射針をとりつけたシリンジでトレーニングを試みた際。

 

  

あきらかに表情が曇るジェニファー、、、

 

「お前もそれやんのか」みたいなご様子だったので、その日はちょっと控えました。

 

別の日になんとかご機嫌をとりまして、注射針の先を折って丸めたものでツンツンと。

 

その後も注射トレーニングを続け、なんとか試薬(生理食塩水)を少量注射することは可能になりました。

 

ただ、実際の薬液は少しトロッとしていて注入する時の違和感が半端ないようで、半年毎の注射までには今回は間に合わず麻酔をかけることになりました。

 

それが先月末のお話です。

 

検査では今回も卵巣腫大の抑制はみられず、高齢のため手術もとてもリスクが高いことは変わりません。

 

ただ、不正出血はこれまでずっと抑えられているため、引き続き注射での治療をしていくことになりました。

 

検査を終えたジェニファー

 

 検査当日にはジョージと合流もできました。

  

 

高齢であるため、麻酔による負担も少しでも減らせるように今後もトレーニングを続けていきたいと思います。

 

 

最後に。

 

そんなジェニファーと一緒にくらしていた過去もお持ちの

キュータロウさん(10年くらい前ですが、、、)

 

左(キュータロウ) 右(ジェニファー)

 

12月5日に食欲不振による体調不良のため入院し、治療と検査をおこなっています。

 

入院中のキュータロウ

 

少し柿やバナナを齧ってくれるようになりました。

ご心配をおかけしております。

キュータロウの様子については、また改めてお伝えしたいと思います。

それでは、また。

6 thoughts on “【Tenagram】ジェニファーと注射針

  1. hisae_f

    ジェニファーの注射、麻酔なしで打てるようになるといいですね!
    キューちゃん、心配してました。柿、バナナ齧れるようになってよかった。
    元気になってまた、てい!をみせてね。まってるよ。

    Reply
    • keeper Post author

      コメントありがとうございます。
      検査後はやはり疑念が残るようで、ジェニファーのトレーニングは、また1から始めなくてはいけないようです。きっと話せばわかってくれるはずだと信じてはいるのですが、表情を伺いながら進めていきます。

      キュータロウは病院で治療を受けながら、なんとか今日も持ち堪えてくれた様子です。

      Twitterでもたくさんの方から心配の声や励ましのお言葉をいただきました。

      ありがとうございます。(奥村)

      Reply
  2. ぁゅchan

    注射が嫌なのはヒトもサルも一緒だね
    ジェニファー見た目若々しいから忘れがちだけど結構な高齢だもんね
    麻酔から覚めなかったなんて嫌だからトレーニング頑張れ
    キューも立派な中年
    病気での入院は初めてだね
    検査してもらえて良かったね
    おいしいもの食べてもいいよって許可出たらキューの好物たくさん持っていくから頑張るんだよ

    Reply
    • keeper Post author

      コメントありがとうございます。
      そうなんです。大迫力なジェニファーは普段はまったく歳を感じさせないのですが、やはり今回の検査でも代謝が落ちてきているせいか、前回よりも覚醒に少しだけ時間がかかったような印象です。

      キュータロウは5年ほど前のバックヤードでケージくらしをしていた頃の体重が5.0kg。今回の検査時は5.9kgでした。

      去年の脱毛や、足に傷があった際の投薬の記録でも推定6.0kgということだったので、体重自体に大幅な増減はなさそうです。

      いつも季節の好物を差し入れしていただき、ありがとうございます。(奥村)

      Reply
  3. やのあい

    だいぶ前の 友の会のつどい で聞いた石田さんがアジルちゃんにやったっていうハズバンダリートレーニングと同じやつですね

    ジェニファー姐さんもキューちゃんも健康になってくれるといいです。

    Reply
    • keeper Post author

      コメントありがとうございます。
      アジルはそれで治療をおこなっておりましたが、麻酔下での検査で、高齢ということもあり、覚醒が遅くそのまま亡くなってしまいました。

      キュータロウは容態が悪い様子です。
      腎臓の機能が低下しており、治療を続けてもらっていますが、本日酸素吸入開始となりました。

      Reply

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