日本モンキーセンター研究倫理ガイドライン

1.基本方針
 公益財団法人日本モンキーセンター(以下、日本モンキーセンターという)は、霊長類等に関する調査研究を基盤に、その保護と生息地の保全を行い、社会教育・普及活動や図書等の刊行、標本等の資試料の収集、さらには福祉に配慮した動物園の設置及び経営等を通じて、国際協力の観点から学術・教育・文化の発展及び地球社会の調和ある共存に資することを目的として設立された。定款に定める通り、この目的を達成するために日本モンキーセンターで実施する事業は以下の通りである。

 (1) 霊長類に関する総合的な調査研究
 (2) 霊長類の保護及びその生息地の保全に関わる活動
 (3) 霊長類に関する環境教育並びに社会普及活動
 (4) 霊長類に関する図書及び学術誌の刊行
 (5) 霊長類の標本等の資試料の収集・管理及び展示
 (6) 霊長類の福祉に配慮した動物園の設置及び経営
 (7) 霊長類の適切な飼育・展示並びにこれに関する技術的指導及び協力
 (8) 霊長類に関する研究会、講演会の開催
 (9) 霊長類等に関する展示、保全、環境教育及び社会普及活動に関わる人材の育成
 (10) その他この法人の目的を達成するために必要な事業

 したがって、日本モンキーセンターで実施する研究は、以上の事業に沿ったものでなければならない。いかなる研究課題であれ、霊長類の保護及び生息地の保全に寄与し、学術・教育・文化の発展及び地球社会に貢献するものでなくてはならない。そして同時に、研究の対象となる個体の福祉に配慮されたものでなければならない。本研究倫理ガイドラインは、霊長類の保護及び生息地の保全と、個体の福祉の両者の均衡がとられた公正な研究を遂行することを研究者が第一に考え、外部有識者を含む倫理委員会による随時の査察・評価を通じて研究の倫理を確保することを目的として定めるものである。

2. 研究倫理委員会の設置
 本ガイドラインを効果的に実行するため、個々の研究計画の妥当性を評価し、その実施を監督する役割を有する「公益財団法人日本モンキーセンター研究倫理委員会」(以下、研究倫理委員会という)を設置する。研究倫理委員会は、日本モンキーセンター所長(以下、所長という)が任命する7名以上の委員によって構成される。委員の過半数は外部有識者とする。なお、委員長は日本モンキーセンターの職員から任命される。研究倫理委員会が必要と認めた場合は、委員以外の者から意見を求めることができる。

3. 研究倫理委員会の役割
<研究計画の審査と承認>
 研究倫理委員会は、日本モンキーセンターで実施するすべての研究についてその妥当性を審議する。日本モンキーセンターの職員が日本モンキーセンターを拠点として研究を実施する場合には、研究計画書を所長に提出しなくてはならない。また、外部機関(動物園、水族館、博物館、大学、研究所など)や野外調査地(霊長類の生息地など)において研究活動を行う場合には、その関連機関において承認された倫理審査結果のコピーを合わせて提出する。外部研究者が日本モンキーセンターを拠点として研究を実施する場合には、連携研究実施規定に従って提出された研究計画書を、連携研究の受入キュレーターが所長に提出する。所長は、提出された研究計画が本ガイドライン及び関連法規を遵守しているかを研究倫理委員会に諮問し、研究倫理委員会の審議結果に基づいて適切な研究計画について研究実施を承認する。研究倫理委員会は提出された研究計画書が以下の要件を満たしているかどうかについて審議する。

(1) 研究計画内容が本ガイドライン及び関連法規・指針を遵守していること。
(2) 研究計画内容が霊長類の保護及び生息地の保全への貢献を念頭に置いていること。
(3) 飼育個体を研究の対象とする場合に、その個体の福祉に対して配慮されていること。
(4) 研究の実施が一般の来園者の妨げにならないよう配慮されていること。
(5) 研究の実施が職員の業務の妨げにならないよう配慮されていること。
(6) 他機関との共同研究である場合は、研究実施者の構成が明らかであり、研究の透明性が確保されていること。また、利益相反のない研究であること。
(7) 研究成果が得られた際の情報公開の方法や得られる利益の還元について、事前に検討がなされていること。
(8) その他、所長または研究倫理委員会が、特別に審議を要すると判断した内容について適切であること。

 所長は、研究倫理委員会が不十分であると判断した研究計画に関しては指導・助言の上、却下もしくは研究計画書の再提出を求める。研究倫理委員会による審査と所長による承認なしに、日本モンキーセンターを拠点として研究を実施することは一切認められない。

<研究の実施状況の査察と評価>
研究倫理委員会は各研究に対して、担当のキュレーターを1名以上任命し、定期的に研究の実施状況について査察と評価を行い、キュレーターを介して研究倫理委員会に対して報告するように指示する。研究倫理委員会は報告をもとに、研究実施状況について妥当性を審議し、改善が必要と考えられる場合は、キュレーターを通じて指導と助言を行う。改善が認められないと判断された場合には研究倫理委員長は所長に報告し、所長は当該の研究を停止させることができる。

<研究終了時の評価>
研究者は研究終了時に、担当キュレーターを通じて、研究報告書(外部からの連携研究の場合は所定の年度末連携研究報告書)を研究倫理委員会に提出する。研究倫理委員会は研究報告書に基づいて研究の評価を行い、結果を所長に報告する。所長はその評価結果に基づいて、必要に応じて研究者に指導・助言を行う。

4. 関連法規・ガイドラインの遵守
研究者は、日本モンキーセンターでの研究に関して、以下の法規・指針を遵守しなくてはならない。
・「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物の愛護管理法)(昭和48年10月1日、法律第105号)
・「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年6月5日、法律第75号)
・「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)(平成15年5月30日、法律第57号)
・「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(平成18年10月31日、環境省告示第140号)
・「動物研究の倫理に関するガイドライン」(平成27年4月10日改定版、京都大学野生動物研究センター)
・「動物園・水族館による動物研究に関する倫理指針」(世界動物園水族館協会、日本語翻訳:佐藤義明・友永雅己、2010年、「動物心理学研究」第60巻2号、139-146)
・「野生動物医学研究における動物福祉に関する指針」(2010年12月18日、日本野生動物医学会)
・「公益社団法人日本心理学会 倫理規程 第3版」(2011年4月20日、公益社団法人日本心理学会)


以上
2016年4月1日施行


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