笹ヶ峰ニホンザル調査

標高1,300m、11月から5月は雪に閉ざされる新潟県妙高笹ヶ峰。最近になって、ここでニホンザルが目撃されるようになりました。はじめのころは雪のない季節だけでしたが、 2019年3月には京都大学と日本モンキーセンターのチームが雪の中のサルを発見しました。

そこで2020年1月より、日本モンキーセンターと京都大学 霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院が共同で、 笹ヶ峰におけるニホンザルの調査を開始しました。

雪の中でサルたちはどんなくらしをしているのでしょう? どうして笹ヶ峰に進出してきたのでしょう?  もしかして気候変動や環境変化の影響があるのでしょうか?たくさんの疑問を胸に、山スキーやドローンなども駆使して調査をしていきます!

※この活動は2020年1月から2022年2月まで、トヨタ自動車株式会社のトヨタ環境活動助成プログラムのご支援を受けて実施しました。

■笹ヶ峰の動物たち【順次追加中】

ニホンザル
(2021年3月22日撮影)

アカギツネ
(2022年1月8日撮影)

「京都大学学士山岳会」の「笹ヶ峰ヒュッテ写真集 <動植物>」へ

■笹ヶ峰のサルの食べもの【順次追加中】

チシマザサ(?)の葉鞘内部
(2021年6月27日食痕)

イヌエンジュの葉
(2021年6月27日食痕)

オオヤマザクラの果実
(2021年6月27日目視)

ノアザミの茎
(2021年6月29日食痕)

■第6回笹ヶ峰ニホンザル調査(2023年2月6日~8日)

未だ感染症の影響で笹ヶ峰のヒュッテが使えないため、今年の積雪期の調査は下流側にいる3つの群れを調べることにしました。毎回調査に参加している赤見と、今回初めて参加するエデュケーターの江藤の2名で活動しました。

2月6日は朝犬山を出て、午後から妙高市役所妙高高原支所を訪問しました。下流側の3つの群れは集落近くにも出没するため、獣害対策として各群1、2頭に電波発信機の首輪が装着されています。市役所の獣害対策等を担当されている方から、最近の群れの動向を教えていただきました。

しかし、無雪期には畑に来ることがあるためほぼ毎日群れの位置が確認されていますが、積雪期には畑に来ることもなく(そりゃ雪に埋もれてますからね)、月に2、3回しか位置を確認しないとのこと。確かにそのとおりですよね。最近で位置が確認されているのが1月31日。この場所をヒントに群れを探すことにしました。

あまり時間もないので、この日は新潟県と長野県の境界を流れる関川周辺を車で探すことに。サルには出会えませんでしたが、関川を渡るサルの足跡を3個体分ほど発見しました。

2月7日の午前中はひきつづき車で広域を調査し、車で入ることができない苗名の滝方向はドローンも使って調べましたが、サルや足跡、食痕等は見つけられませんでした。午後は最も可能性が高そうな関川沿いの遊歩道(と言っても除雪されてないのでこの季節は誰も通らない)をスノーシューで歩き探索しました。天気もよく、まっさらな雪面を歩くのは最高の気分です。熊本出身の江藤さんも雪に囲まれて楽しそう。これでサルが見つかればもっと最高のはずです。

キツネの足跡や、対岸で走り回るニホンリスなどを観察しつつ歩きましたが、遊歩道はもうすぐ終点。そろそろ引き返そうかと思ったあたりで新しい食痕を見つけました。電柱にまきついたクズのさやがバラバラと落ちています。そして前方に・・・いました!群れです!

私たちに気が付いて一瞬逃げましたが(上の写真は尾を立てていて、少し“緊張”しているのがわかります)、こちらがあまり動かないのがわかると、思い思いに採食を始めました。熱心に食べているのは先ほど見たクズの実と、他にもマメ科の植物の実、灌木の樹皮など。電波発信機をつけたメスもいます。この位置から、おそらく「No.2」と呼ばれている群れだろうと推定しました。3時間ほど観察していましたが、ほんの少し下流側に動いた程度でほとんど動きませんでした。

最終日の2月8日は、朝から昨日の群れが同地点付近にいることを確認し観察していたところ、100m程度離れたところに3頭のグループを発見しました。そのうち2頭(オトナオスとオトナメス)に発信機の首輪がついています。あれ?1つの群れについている発信機の首輪は多くて2つのはずだけど・・・もしかして別の群れ!? そう思って観察すると、この3頭(オトナオス1頭とオトナメス2頭)のうちメス2頭はどうも落ち着かず、特に発信機のついていない1頭はずっと鳴き続けています。もしかしたら別の群れから離れたオスについて、ここまで来てしまったのかもしれません。のちほど首輪の色で確認したところ、昨日見つけた群れは「No.3」で、3頭だけのグループは「No.2」の一部だったことがわかりました。

その後、まだ発見していない「No.1」の群れを探しましたが、見つけることはできませんでした。実は「No.1」は無雪期には笹ヶ峰牧場まで遊動してくることがあり、通称笹ヶ峰群に最も隣接する群れです。「No.1」に出会えなかったのは残念ですが、麓のサルたちのくらしを垣間見ることができ、思いがけず群れの一部が近接する場面にも出会えました。笹ヶ峰に入れなかったぶん、麓の杉野沢の宿の方や市役所の方からたくさんお話しを聞くことができ、いつもとは少し違った面で学ぶことの多い調査となりました。(報告者:赤見)

■第5回笹ヶ峰ニホンザル調査(2022年10月13日~15日)

報告準備中です

■第4回笹ヶ峰ニホンザル調査(2022年2月22日~24日)

2月末の調査は、いろいろな意味で困難を極めました。   感染症の影響で未だ京大ヒュッテを使うことができず、仕方がないのでテント泊を予定していました。ところが今年はそもそも豪雪で、すでに笹ヶ峰は4m以上雪が積もっているうえ、調査予定の日程に強い寒波が襲来するとのこと。加えて今回は調査員が確保できず、京都大学の大学院生2名と赤見の3人だけという、ちょっと心細いメンバーです。雪上車も笹ヶ峰まで上がることはできないかもしれないと言われ、調査内容を大きく見直すしかありませんでした。

上の写真は麓の杉野沢の集落です。大きな道は除雪されていますが、一本入るとこの状態。家が雪に埋まっています。

そこで日程を短くし、寒波がくる前のチャンスを狙って、雪上車ではなく山スキーで、可能な限り笹ヶ峰にアクセスしてみることにしました。

永遠と続くラッセルです・・・。でも今回は、下山した京大山岳部のみなさんのトレース跡があったので、比較的歩きやすくて助かりました。

雪が吹きすさんでいるここが、「池ノ峰トラバース」と呼ばれているところ。2021年6月の調査で、1日目からさっそくサルの群れに出会ってしまったところです。ここまで来れば笹ヶ峰が見渡せます。しかし、写真を見てもわかるとおり、驚くほどの強風と、強風に巻き上げられた雪が巨大な凹凸を作っていて、雪崩の危険もありそうでした。残念ですが、ここで引き返すしかありませんでした。

今回の調査では結果的にサルを見ることはできませんでしたが、道中にサルがいなかった(足跡もなかった)というネガティブデータは得られました。また、市役所の方と情報交換させていただいたり、大学院生2名に山スキーを体験してもらったりと、得られたものもありました。この調査が次につながることを願います。(報告者:赤見)

■臨時の1日だけ調査(2021年12月16日)

今回は1泊2日の1人旅(赤見のみ)。もう12月なので、笹ヶ峰は雪に閉ざされているはず。ということで今回は笹ヶ峰には入らず、調査や特別展でお世話になった妙高市役所や教育委員会、自然保護管事務所などへのご挨拶と、情報交換、資料収集を目的に出張しました。

ところが出発前に積雪深データやライブカメラを確認すると、ここ数日間続いた晴天のおかげで、まだ雪は多くないようです。出張1日目も晴天。しかし2日目から雪になる予報なので、車で笹ヶ峰に入れる今年最後のチャンスかもしれません。念のためサル調査の準備も整えて、まだ暗いうちに犬山を出ました。

今回は1人なので、無理はせず慎重に車を進めます。笹ヶ峰への山道には多少の雪はありましたが、無事笹ヶ峰に到着できました!すると道の前方に、見慣れた足跡が・・・(写真は車で通過したあとを振り向いて撮りました)

たくさんの足跡の中に小さいものもあります。群れです!9:00群れの足跡発見。

足跡の写真を撮っていると、“ホゥイッ ホゥイッ”。サルの声です!車を安全な場所に停め、さっそく探しに。幸い雪はまだ浅く、長ぐつで歩ける程度。背丈のあるササを除き、下草は雪に倒されているので、1年間で今が一番歩きやすい時かもしれません。

足跡や食痕を観察しながら群れの気配を追っていくと、前方に群れ発見! 雪面をゆったりと歩いています。

途中で少し採食したり、木に登って休息したりしながら、少しずつ移動していきました。写真は木に登って休息中のようす。私もひと休憩しながら、一眼レフを取り出して撮影しました。

3時間ほど追跡し、谷に下りていくところで一度見失ってしまいました。双眼鏡で対岸を探しましたが見つからず。 広く見渡すと、上流方向に向かっていく群れの一部を見つけました。(以下の動画では、おはずかしながら1人でしゃべってます。記録用です。

この先は崖になっているので、1人では危ないと判断し、追跡はここまでに。12:00観察終了。

今日の遊動範囲や、電波発信機の首輪をつけた個体が見られなかったことから、今日観察した群れは、私たちの調査対象、仮称「笹ヶ峰群」だったと思われます。でも、このあたりに1群しかいないと断言はできません。観察終了後、車に戻り、ドローンで周囲を探索しました。“絶対いなかった”とは言えませんが、他の群れは見つかりませんでした。

雪が降ると下山できなくなるかもしれないので、ドローン調査も早めに切り上げて笹ヶ峰を後にしました。その日の午後と翌日は、予定どおりしっかり関係各所を訪問し、充実した出張となりました。(報告者:赤見)

■第3回笹ヶ峰ニホンザル調査(2021年6月26日~29日)

6/26(金)~6/29(月・祝)、3回目となる笹ヶ峰ニホンザル調査に行ってきました! 新型コロナウイルスの影響で冬の調査ができなかったのが悔やまれますが、感染状況が少し落ち着いてきたこの時期、さまざまな対策を万全にして調査を実施しました。今回は第2回、3回に参加しました星野から報告します。

今回は事前の天気予報は4日とも雨! 更に前の2回とは違い6月後半の森は緑モリモリ、 笹ヶ峰でも日なたは暑くてサルを見つけるのが先か自分がバテるのが先か心配になっちゃう時期の調査です。 (1回、2回は積雪期の調査のためスキーを履いて一面真っ白の世界での調査でした)

前回はドローンや双眼鏡、目視で確認できたサルたち。今回はどうなるかな?? なんて考えているといきなり道中サル登場。

でもこちらは冬見たグループと違うみたい

初日はこのグループとの遭遇のみで、その後は一度ドローンを飛ばした後、周辺のセンサーカメラの回収と食痕の確認に回りました。

こちらイヌエンジュの食痕

よーく見ると先の方の葉が無くなっているのわかりますか?

2日目は、前日回収できなかったところのカメラの回収後、歩いてサル捜索。雨もパラついてきたし今日は無理かなとあきらめかけたその時!いきなり発見サルの群れ!静かに周りを見渡すと雨の中じっとしているサルがあっちにもこっちにも。

その後は刺激しないよう距離を取りながら後をついていきました、そして1時間ほど観察できた後、群れは森の中へ消えていきました。

3日目は朝から前日群れが森の中へ消えていった辺りへ。すると、ひらけた所に群れが

1時間ほどのんびりしているところを観察したあたりで群れが森の中へ移動。私たちも追って藪の中へ入っていったのですが、すぐに姿が見つからなくなってしまいました。(170㎝くらいの藪をかき分けサルについていくのは大変)

その後は前回の冬の調査で、双眼鏡で発見できた場所へ。見比べてみると

今回

前回(冬・上の赤枠部分の拡大)

よくこの距離で見つけましたね、赤見さん!緑の時期じゃ無理そうです。

4日目は前日に観察できた所にまず行ってみよう。ということで2手に分かれて出発。すぐに根本君が発見!(私は別ルートだったのでハズレ)

これですべての日にサルを観察することができました。この後ひらけた所にいるサルたちを 赤外線ドローンで撮影。

見えないこともないですが地面が熱くて赤色になっているので見にくいですね。積雪の活躍に期待しましょう。そんなところで今回の調査のタイムリミット、名残惜しいですがここで犬山へ帰犬になりました。

今回もサルの群れを観察することができたのですがなかなか個体識別するのは難しいですね。

このように1頭1頭顔が違うのはわかるのですが全頭の顔を把握しているわけではないので、次見たときに同じ個体なのか、それともそっくりな別個体がいるのか?見分けるにはまだまだ回数がかかりそうです。頑張らねば!

そして、今回の調査隊はこの4名でした。

次の調査ではどんな新たな発見ができるのか、今からもう楽しみです。(報告者:星野)

■第2回笹ヶ峰ニホンザル調査(2020年2月21日~24日)

2/21(金)~2/24(月・祝)、2回目となる笹ヶ峰ニホンザル調査に行ってきました! 1月の調査ではサルの姿も痕跡も見つけることができませんでしたが、 今回は1日目にドローンでサルの姿をとらえ、 2日目には双眼鏡で、3日目には比較的近くから目視で 観察することができました。 雪に閉ざされた真冬の笹ヶ峰で、サルたちはどのように越冬しているのでしょう? 今回の調査で冬の食物の一部を確認することができました。 今後も調査を続けてまいります。

調査初日、暗くなる前に1回だけ!とドローンを飛ばしたところ、なんとサルを発見しました!!写真は2日目のドローンからの写真です。

調査3日目は吹雪のためドローンは飛ばせず、山スキーで昨日サルを発見した場所へ。サルたちは吹雪の中、比較的風を防ぐことができる南向きの谷間にいました。

写真は雪が少し弱まった瞬間のもの。樹種はわかりませんが、低い木の皮をよく食べていました。

調査4日目はドローンからじっくり群れの移動を撮影できました!目が慣れてくるころには、画面下部から小さな個体がワラワラと走り出します。(画面を最大化してご覧ください!)そちらに目をとられていると左の方からも、、、。私たち調査隊はこの動画から個体数をカウントします。何頭いるか、わかりますか?

第2回調査はこの7名でおこないました。真冬の2月にサルを見つけることができて“最高の笑顔”です。(報告者:赤見)

■第1回笹ヶ峰ニホンザル調査(2020年1月20日~24日)

今年は雪が少ないとはいえ、笹ヶ峰は一面銀世界。山スキーやドローンを使ってニホンザルを探しました。2019年3月には雪の上を走るニホンザルの群れを目撃しましたが、 今回の調査ではニホンザルの姿や痕跡を見つけることはできませんでした。積雪期の笹ヶ峰でサルたちがどのようにくらしているのか(もしくはどこかに移動しているのか)、今後も調査を続けてまいります。

調査の拠点となる京大ヒュッテ。夏は路線バスで来ることができますが、この季節は雪上車か山スキーでしか来ることができません。

山スキーでの調査の様子。一歩が重い、、、。交代で先頭を務めます。動物の足跡や食痕を探しますが、どんどん雪が積もっていくので調査は困難を極めました。

やっと見つけた何かの食痕!ウワミズザクラの樹皮を食べていました。サルだと思いたいけどカモシカなどかもしれません。

調査3日目にしてやっと晴れました!これならドローンが使えます!

必死にラッセルして歩いた場所も、ドローンなら上空から数分で確認できます。上空からの絶景を楽しんだあとは、目を皿のようにしてサルの姿や足跡を探しましたが、、、、

残念ながら姿も足跡も見つけられず。最終日は山スキーでいくつかの足跡を見つけましたが、これはサルではないですね。

第1回目の調査はこの4人のパーティーでおこないました。最終日にヒュッテ前にて。笑顔ですが、サルを見つけることができなかったので“最高の笑顔”とはいきませんでした。今後の調査に期待!!(報告者:赤見)

■調査へのご支猿のおねがい

ドローンを飛ばす際、現在は個人のiPhoneを使っているのですが、画面が小さくてドローン画像がよく見えません、、、。中古で不要なiPadがありましたら、ぜひご寄附いただけますとうれしいです。

>>詳しくは『中古でもいいのでほしいものリスト』

⇒ありがたいご寄附をいただきました!ありがとうございましたm(_ _)m