■アビシニアコロブス新生児の体色変化と育児行動に関する論文の概要と解説

イロハ(中央)と母親のイエロー(左側)、オトナメスのレモン(右側)。2015年夏撮影。

コロブス類は他の霊長類と比べて、1日当たりの個体間の関係を築く行動に割く時間が少ないといわれている。しかし、メスによる新生児を介したアロマザリングと呼ばれる育児行動(論文中の”infant handling”)という形で個体間の関係を築く行動が野生、飼育下ともによく見られる。そして、この行動は霊長類の中でもコロブス類に特徴的な、新生児の体色がオトナ個体と異なることと関係しているのではないかといわれている。アビシニアコロブスの場合、オトナ個体の体色は白と黒の直毛だが、新生児は白い巻き毛となっている。そこで2015年の出産例をもとに、新生児を出生当日から観察することで、新生児(イロハ)を介して、母親(イエロー)とオトナメス(レモン)及びオトナオス(キクマサ、ファンタ、エール)との間でどのようなアロマザリング行動が起こるかを、新生児の体色変化との関係とともに調べた。


キクマサ

イエロー

レモン

イロハ

レナ
一部の個体の顔写真。2018年頃撮影。

その結果、レモンはイロハがうまれてすぐから、イエローからイロハを取り上げ、抱いており、その後イエローとレモンの間でイロハの取り合いが数週間続いた。しかし、イロハの体色が白色から白黒へ変わるにつれて、レモンがイロハを抱く割合は徐々に減少していった。そして、イロハが単独で行動する割合が徐々に増加した。なお、オトナオスはイロハとほとんど関わらなかった。イエローが抱く割合は観察期間中、大きな変動はなくおおむね一定の割合で抱いていた。また、新生児の体色の変わり具合が体の部位によって異なり、腹側より背側の方が遅いことが分かった。

以上のことから考察すると、新生児において背側の方が腹側より体色の変わり具合が遅いのは、新生児が他個体からの育児行動をより長い期間受けるためであると考えられる。なぜなら、背側は他個体から見えやすい部位であるため、新生児がある程度成長しても、背側の体色変化が遅いことで、他個体からはまだ幼いと認識される可能性が高い。これにより、新生児が母親以外に他個体からも自身を守られる期間が長くなるため、母親が何かしらの要因でいなくなったとしても、新生児の世話を他個体が続けることで新生児の生存確率を高めることが可能となる。このことは、新生児及び母親の両者に利点があると予測される。また、アロマザリング行動をおこなう個体にとっても利点となることがある。アロマザリング行動は主にメスーメス間の行動であるが、特に出産経験がないメスにとっては、育児練習となる点が指摘されている。実際、レモンはイロハを抱き始めたとき、抱き方がへたくそで何度かイロハを落としそうにしていた。しかし、次第に抱き方のコツを掴んだのか、上手に抱くようになった。そして、2016年3月にレナを出産した際には、上手に子育てをしており、2018年11月にイエローがイイチコを出産した際には、レモンだけでなくイロハやレナもイイチコの取り合いに参加していた。イロハやレナにとってイイチコは、妹以上にとても重要な存在であったと感じる。

レモンがイロハを抱く割合が減少した要因は、イロハの体色変化と同様にイロハが単独で活動する割合が増加したことも関係していると考えられる。そのため、今回の結果のみでは、アロマザリング行動と新生児の体色変化が関係していているとは必ずしもいえない。より詳しく調べるためには、新生児の体色変化の他に、新生児の体重変化や新生児の運動能力といった他の要因についても検討する必要がある。

[2020.11.8 元スタッフ 奥村太基より]


新生児の頃のイロハ。2015年8月8日撮影。

オトナと同じ体色になったイロハ。2017年4月1日撮影。

新生児の頃のレナ。2016年4月23日撮影。

2018年11月に生まれたイイチコを抱くイロハとレナ
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