このページでは、日本モンキーセンタ-の親善大使に就任された竹下景子さんの活動をご紹介してまいります。
■ごあいさつ
こんにちは。2019年3月に日本モンキーセンターの親善大使を拝命しました。
ここは私の故郷愛知県にある懐かしい場所のひとつです。でも、正直びっくりしました。私に務まるでしょうか。
公式ホームページを開いて、またびっくりしました。動物園であるばかりでなく、博物館でもあるのですね。がぜん興味がわいてきました。
お猿が親しい隣人に思えてきたからです。38億年の壮大な地球の生命の物語の中で、ヒトとお猿は双子の兄弟のような存在です。
まだまだ知らないことばかりですが、そこはプロフェッショナルの皆さまにご指導を仰ぎつつ、
モンキーセンターの魅力をより多くの方々に知って頂けるよう努めてまいります。
どうぞよろしくお願いします。
公益財団法人日本モンキーセンター親善大使 竹下景子
■『今日もOSARU日和』連載中!
雑誌「モンキー」に、竹下景子さんによる連載『今日もOSARU日和』を掲載しています。
毎回やさしさあふれる文章でサルたちの魅力を語ってくださっています。
特別にオンラインで公開していますので、以下よりご覧ください。
■第15回「春よ来い」 モンキー7巻4号(2023年3月発刊)より

①新アフリカ館でパタスモンキー(
Erythrocebus patas) が迎えてくれました。(撮影: さとうあきら) ②新アフリカ館の屋内でマンドリル(
Mandrillus sphinx)のニースケを見上げて。(撮影: さとうあきら)③パタスモンキーのマイタケとキノコ。(撮影: 江藤彩子) ④アビシニアコロブス(
Colobus guereza) のイロハとレナ。(撮影: 江藤彩子)⑤クロミミマーモセット(
Callithrix penicillata) のオサゲとカカオ。(撮影: 新宅勇太)⑥フランソワルトン(
Trachypithecus francoisi) のニイとライム。(撮影: 新宅勇太)⑦ニシゴリラ(
Gorilla gorilla) のタロウさんと奇跡のみかん。(撮影: 江藤彩子)
2023 年の「初モンキーセンター」は新アフリカ館からスタートです。入居第一号のパタスモンキー一家が出迎えてくれました!ガラスの大窓からは間近に彼らの生活を見ることができます。真新しく明るいこの部屋に、もうすっかり慣れたのでしょうか。キノコとピノコは早く馴染んだそうですが、端の高いところに独りぽつんといるのはウルかな?固まっているみたい。ウルとマイタケはもう少し時間が必要なようです。これまですごした園舎が生活の場の全てだった彼らにとって、お引っ越しはヒトが思う以上に人生の一大イベントです。
中に入ってキーパー通路から屋内の様子も見学させて頂きました。特別に、です。日中は日差しが降り注ぎ、入口から突き当たりまで全て見通せる新アフリカ館ですが、以前の「箱」のような園舎から、止まり木やハシゴなど、それぞれの種に合わせた生活感あるエリアに生まれ変わっていました!素晴らしい!飼育員の辻内祐美さんは、この日に備えアーク溶接の資格を新たに取得して現場に臨みました。皆様ほんとにお疲れ様です。それにしても飼育員さんの仕
事は無限大ですね。日々の給餌や園舎の清掃、動物達の健康管理。そうそう、以前に「営繕班」の仕事っぷりも拝見していました。加えて、このたびの新施設。頭が下がります。
中のケージにいたのはマンドリルのニースケ。アフリカセンターからのお引越し。今は適度な広さと高低差があり、運動場へも難なく出られます。気ままに餌を頬張りながら新参者の私の方へ「なんか用?」とばかりに近寄って来てくれました。飼育員の廣澤麻里さんによれば、慎重派のニースケにまず慣れてもらってから、さらに慎重なデイちゃんに来てもらう予定とか。二人のお見合いは2019 年以来、なんと4年ぶりだそうです。どうかカップル成立しますように。母心、いえ老婆心ながら祈っています。
出口近くのケージ、高い止まり木の上にはアビシニアコロブスのイロハとレナが人待ち顔で並んでいます。そして、そのお向かいにはニューフェイスのピンくん。顔の配置が、なぜかちょっと困り顔w。やんちゃ娘に挟まれてモテ期?イロハともレナとも相性がよくて、3 頭一緒よりはそれぞれのペアでいるのがいいようです。これから先が楽しみだなぁ(目がハート)。
出口近くのケージ、高い止まり木の上にはアビシニアコロブスのイロハとレナが人待ち顔で並んでいます。そして、そのお向かいにはニューフェイスのピンくん。顔の配置が、なぜかちょっと困り顔w。やんちゃ娘に挟まれてモテ期?イロハともレナとも相性がよくて、3 頭一緒よりはそれぞれのペアでいるのがいいようです。これから先が楽しみだなぁ(目がハート)。
同居のニュースは南米館も。飼育員の坂口真悟さんに案内してもらいます。クロミミマーモセットのオサゲのもとにカカオがお嫁さんに来てくれました。食欲旺盛なカカオにオサゲおされ気味?でも可愛らしくて微笑ましい二人です。
そして極め付きは、アジア館。フランソワルトンのニイちゃんと、偶然にもピンくんと同じ日に来園したシティボーイ、ライムくんがお見合いの後めでたく同居。目下、人も羨む睦まじさ、です。愛されすぎてライムくんの顔の辺りに皮膚荒れや毛の抜けたところが、ウ・フ・フ。前のよこはま動物園でも、ここモンキーセンターでも「良いオス」と定評のあるライムくんは、飼育員の市原涼輔さん曰く「超絶ウルトラスーパー爆食!」。確かに私たちの前でも、傍らのニイちゃんがキャッと言って逃げるほど、すごい勢いで木の枝を掴んでムシャムシャ食っていました。たくさん食べて、元気なベビーのお父さんになってくださいネ。
訪問のシメはやっぱりニシゴリラのタロウさんです。4 月20 日で満50 歳!オスの国内最高齢の記録をまた一つ延ばすことになります。この日も屋内の運動場で、背を銀鼠色に輝かせ泰然とたたずんでいました。見惚れてしまうわ、タロウさん。
麗らかな一日。園内には、そこここに春の兆しがありました。幸せな思いを胸に帰宅。夜、思い立ち、お正月に贈って頂いたタロウさんの『奇跡のみかん』を食べました。含むと野生の果物のような酸味が口いっぱいに広がりました。青春の味でした。
■第14回「雨降りの慰霊祭、再び」 モンキー7巻3号(2022年12月発刊)より

①お供え物としていただいた果物や野菜など。(撮影:高野智) ②慰霊祭に参列いたしました。(撮影:高野智)
③ボリビアリスザル(Saimiri boliviensis)のミカン。(撮影:田中ちぐさ) ④ウバ。(撮影:田中ちぐさ)
⑤シルバールトン(Trachypithecus cristatus)のテラ。(撮影:浮瀬百々香)⑥バルカン。(撮影:浮瀬百々香)
⑦アカオザル(Cercopithecus ascanius)のスペード。(撮影:辻内裕美)⑧ヤクシマザル(Macaca fuscata yakui)のウィンキー。(撮影:奥村文彦)⑨ヒョウガ。(撮影:奥村文彦)⑩チワワ。(撮影:奥村文彦)
モンキーセンターの中心に位置するビジターセンター脇の坂を登ると、中ほどに小さな石碑があるのが目に留まります。猿塚です。10月17日は日本モンキーセンター創立記念日。動物慰霊祭が催される日でもあります。1956年開園ですから、今年で66周年。霊長類図鑑によれば、戦後復興の一貫で創設された世界でオンリーワンのモンキーセンターでしたが、当時センターと名がつくのはヘルスセンターと麻雀センターくらい。理解してもらうのは大変だったとか。17日現在、56種775頭が飼育されている。数字だけ見ても、圧巻。
この日は朝から涙雨。傘の長い列ができました。「今年も来ましたよ」と声をかけてくださった方も。ありがたいことです。手紙、花かご、野菜や果物、落花生などあふれんばかりのお供え物が思い出の写真を彩っています。持参して、あるいは宅配でお届け下さいました皆様に心より御礼申し上げます。あふれんばかりのご厚意に包まれて、旅立った者たちは慰められ、今いる者たちは大いに活力を得ることでしょう。動物たちはもちろんそれに関わる人たちも。
これまでで6777頭、この1年では36頭が虹の橋を渡りました。飼育員代表の土性亮賀さんがボリビアリスザルのおばあちゃんズ、ミカンとウバへ感謝の言葉を述べました。ふたりとも30才に手が届く年齢。そうそう、リスザルの島で私が最初に名前を覚えたのもミカンでしたっけ。虫はみなの大好物で、夏もセミが鳴かないこの島。周りが大騒ぎをしている中でも、ミカンはゆったりと現れて、虫を探して地面をサクサク掘っていました。最後までマイペースで自立していたのが長寿の秘訣だったのかな、と思います。安らかに。ゆっくり休んでくださいね。
希少な種ではシルバールトンのテラが8月に、10月にはバルカンが旅立ちました。顔の周りを銀色の毛が優雅に覆って体全体も燻し銀のように光る美しいおサルでした。日本の動物園で会える最後の2頭だった。寂しくなるなぁ、とテラとバルカンそれぞれの遺影を眺めていたら、アレ、誰かに見られてる?潤んだ瞳、アカオザルのスペードでした!額縁の中からじっとこちらを見つめてる。お鼻がハートのスペードさん。記録には1992年来園以来、30年、ダイヤとの間に6頭の子どもをうみ育てた、とあります。ダイヤとスペードの子だから、クローバー、ハート、エース、ポーカー、ジャック、マジック。ネーミングに若干苦労の跡が見受けられますネ。そうか、いつもきびきび動いてたのはスペード母さんと4頭の娘たちだったんだ。だからかな、シンクロナイズドスイミングみたいに同期していた印象がある。スペードさん、幸せでしたか?あなたの一生は、きっと多くの人に喜びを与えてくれた年月だろうと思います。ありがとう。そしてお疲れ様でした。
ヤクシマザルの社会では、この1年いろいろな出来事がありました。ウィンキー、ピパ、ヒョウガ、チワワの4頭が亡くなり、中でもウィンキーの最後は壮絶でした。“義侠心に厚い性格”で群れの順位が変わっても自分の態度を変えず、アルファオスを巡る闘争の中でタイマツを護りぬいて息絶えました。前アルファのタイマツは、今バックヤードで平和な生活を送っています。あなたがいたからだよ、ウィンキー。ウィンキーもヒョウガもユニークな風貌で、焚き火の季節にはモンキーバレイの上からでもよく見分けられました。ヒョウガ、あなたも仲間想いのひとりだったんですってね。あなたたちのような個体がこれからも育ってくれることを願っています。高い空から見守ってくださいね。
最後まで懸命に生きて、生き切った彼らの姿は私たちに多くのことを語りかけてくれます。学術的な分野はもちろん、同じ星に生きる生き物としての素晴らしさ、生命の巡りの尊さに打たれます。会えて良かった。忘れない。小さなことにくよくよせずに、私もまっすぐ前を向いて生きようと心に誓ったのでした。
■第13回「新しい風が吹いてきた」 モンキー7巻2号(2022年9月発刊)より

①ハルとハルサメの親子。(撮影:2022年6月6日、土性亮賀) ②新アフリカ館の「枯山水」。(撮影:綿貫宏史朗)
③ワオキツネザルのチェリーとチェッティー。(撮影:2017年3月31日、坂口真悟) ④母親の背中に乗るレーズン。(撮影:綿貫宏史朗)
2022年6月最後の日曜日、体感35度超えの日本モンキーセンターです。時折の雷雨に見舞われながらも、樹々を吹き渡る風を感じる動物園は、スタジオでライトに照らされて仕事漬けの毎日から解放されてパラダイス、楽猿、イエ、楽園でした。
会えました。6月生まれ、ボリビアリスザルの男の子、ハルサメです! 母親のハルが地面に降りてくると、その背の上でパッチリ目を開いていました。リスザルは見た目も可愛らしいおサル。で、この赤ちゃんの、ちっちゃさが、もう、たまらない。「大きくなりましたか?」と飼育員の土性亮賀さんに聞くと「生まれた時から、このくらいの大きさです」。エエッ? 母体の大きさからして、新生児でこれはデカくないか? 人間と比較して、の感想です。あの大きなパンダの母親から、豆粒みたいなピンクの赤ちゃんが生まれてくることを思えば、なおさらです。
出産直後の写真を土性さんに見せてもらいました。朝の寝室で、生まれたての子は体毛がしっとり濡れて目は固くつぶったまま母親の背中にしがみついています。撮影の前後には、おばあちゃんのハニが母子に寄り添っていたようです。命が生を受ける瞬間は愛おしい。誰にともなく感謝したくなります。なるほど、3週間近く経っていますが赤ちゃんの大きさは、さほど変わっていませんでした。小さなハルが大きくたくましく見えてきた。ハルサメ、みんなに愛されて、ハーゲン兄ちゃんやハズキ姉ちゃんとも仲良く、丈夫にスクスク育ってください。
Waoランドの午後の時間はランタナ、ラベンダー、ラベンナ、レックスの4頭。私たちのそばをゆうゆうと動き回っています。そう言えば、2017年の初夏、岐阜県可児市で公演があり、有志でモンキーセンターを訪れました。その時、Waoランドで複数の赤ちゃんワオキツネザルに会ったのと、アフリカセンターで1頭のマンドリルが赤ちゃんの亡骸を胸に抱いていたことを思い出しました。当時はベビーラッシュだったんでしょうか。幼い命の記憶です。
リニューアルオープンした南米館は「おでかけタマリン」に続いて屋内にも通路が設けられており、覗いた時はワタボウシタマリンが元気に移動していました。他のケージの様子が気になるらしく、屋外のスペースまでおでかけするところは見られませんでしたが、一家で遊ぶ姿を外から見学できる日も近いことでしょう。 南米館の真っ暗な一角では、目を凝らすと水を張ったような大きな目が4つ、こちらを見つめてる! 昨年11月に生まれたヨザルのヨザキと父親のザラメです。言われなければ親子と分からないくらい。成長の早さにはビックリです。ヨザルは父親も子育てするそうで、乳離れした息子と仲良く同居中でした。これからの成長が楽しみです。
秋の完成に向けて着々と準備が進んでいる新アフリカ館(仮称)を、附属動物園部長の綿貫宏史朗さんに案内して頂きました。明るい!天井からの採光が寝室や通路を広々と照らしています。風通し、見通しもいい。人や動物の出入り口には改良が施されているから、日々の作業がはかどりそうだ。職員自ら選んだ庭石を使った「枯山水」から柵越しに外を見る。ギボンハウスの前を行く「ヒト」という名のサルは、よく喋りよく動く。忙しそうだなぁ(笑)。消防ホースで作られた硬めのハンモックはゆりかご、な感じでクセになる安定感。次に来る時、この新しい施設で個性豊かなおサルたちに会えると思うと、ワクワクが止まりません。そして、竣工の先には更なる夢が。パタスモンキーが風を切って走る。アビシニアコロブスが家族で樹間を渡っていく。そんな未来を私も一緒に見つめていきたい。進化はまだまだ続きます。
ニシゴリラのタロウさんにもご挨拶しました。運動場でキュウリを片手に「グフッ」。盤石の49歳です。こっちまで嬉しくなるなぁ。 帰り道「あ、風」と振り返ったら、モンキースクランブルに続く吊り橋のてっぺんを、ジェフロイクモザルのレーズンがいとも軽々と渡っていった。ワタシ、お姉さんになったでしょう、とでも言うように。みんな元気で大きくなあれ!
■第12回「獣医師の仕事」 モンキー7巻1号(2022年6月発刊)より

①動物園のバックヤード(動物病院)。(撮影:江藤彩子)
②インプラントを入れる手術をする武田さん。(撮影:江藤彩子)
③2020年12月、たき火の前で大きなあくびをするタイマツ。アルファオスらしく群れの真ん中を陣取っている。( 撮影:高野智)
④深手を負った状態で発見されたタイマツ。この後病院に運ばれた。(撮影:舟橋昂)
⑤元気になって寄附でいただいた果物をほおばるタイマツ。(撮影:浮瀬百々香)
動物園のバックヤードで、なくてはならない存在が獣医さん。その仕事について、昨年2021年6月から日本モンキーセンターで獣医師専任になった武田康祐さんに聞きました。
家畜やペットと違うのは人馴れしていない動物が相手ということ。なので、診察には麻酔がつきものなのだとか。ちょっとキツそうなお仕事です。飼育員さんからの「何かヘン」という情報に始まって、連携を取りながら、経過観察か、
投薬、検査(時には手術も)するかを決めていきます。投薬に関しては飼育員の考え方や管理の仕方を尊重します。ケージや群れの構成が異なるため、与え方や回数を工夫しなくてはならないからです。そこが動物園らしいところ。ニ
ホンザルやヒヒなど群れで暮らす種は順位に影響するため、すぐに捕獲、治療とは限らない。投薬のみで自然治癒を待つということは実際よくあるそうです。
昨年秋、ヤクシマザルが飼育されているモンキーバレイでアルファオスが交代した時はどうだったのでしょう。当時のことを飼育員の舟橋昂さんに振り返ってもらいました。
群れの様子が前の年とは違うと感じたのは9月。いつもならタイマツを先頭にメスたちが後ろに並ぶ「タイマツ列車」が現れる頃。タイマツはモンキーバレイを長期安定路線に導いたアルファオスです。リーダーシップがあり人にも
常に一目置いていたので、舟橋さんから見ても「任せられる」アルファでした。
それが、この年は現れない。何頭かのオスの周りにメスが群れている状態に、舟橋さんは、寄附飼料が増えたことで皆の栄養状態が良くなっていたから、とも考えたそうです。でも、実はこの時すでにタイマツは群れを統制する力を失いつ
つありました。
11月15日朝、タイマツと第二位オスのウィンキーの家系と、若オスを中心とした別の家系との間で闘争があったらしく、タイマツを守るウィンキーと何頭かのメスが孤立した状態で発見されました。アルファの交代でした。
病院に運ばれたタイマツとウィンキー。タイマツは攻撃から逃げようとして深手を負い、さらに足を骨折。ウィンキーは全身を負傷。2頭とも全身に複数の外傷を受け重体でした。新人の武田さんはあまりの事に途方にくれました。
麻酔をしてひとつひとつの怪我の治療はできたとしても、何が正解か分からなかった、と。ベテラン獣医であれば、本人の負担を軽くするために治療は短時間で終え、回復を待つ方法を取ることもある。全体としては、どのタイミング
で治療すべきか判断がとても難しいケースでした。
幸いにもタイマツは一命を取り留めましたが、ウィンキーは多発性外傷で亡くなりました。第二位のプライドにかけて、最後までタイマツを守ろうとして戦ったのかもしれない、と舟橋さん。ウィンキー、お前はまるでサムライだったね、
安らかに。
新人ゆえの失敗もありました。怪我の際に使用した抗生剤が思ったより効かなくて「もっと良い方法があったのでは」と。でも、命を預かる獣医さんには、その気持ちを忘れないでいてほしいと思います。老婆心です。
動物園では繁殖の管理も重要な仕事です。獣医さんが避妊の処置をしています。避妊薬には効き目が切れると妊娠するものと生涯不妊になるものがあって、モンキーセンターでは動物福祉の観点から3年に一回くらいの間隔で機能回
復する方を処方しています。インプラントを背中に埋め込む方法です。でも、これが時に抜け落ちる。「そのおかげ」で、私たちは可愛い子ザルの姿を見られるのですが。出産の機会が乏しいのでもっと経験してみたい、と武田さんは言
います。「まだまだ学ぶことがたくさんある。それが楽しい」未来を見つめる瞳には星が宿っていました。動物たちの健やかな日々のために、幸せな未来のために、健闘を祈ります。
1月、入院中のタイマツをお見舞いしました。多目的ルームの一角に、タイマツとよく似た顔のダイブと並んで1人用のケージに収まっていました。「なんだオマエ」という顔をされました。元気そうでした。
タイマツはモンキーバレイの群れには戻らず、今も、バックヤードで穏やかな日々を送っています。
■第11回以前は以下よりご覧ください
第11回 モンキー6巻4号掲載
ローバーの転身、シンのほお袋 |
第10回 モンキー6巻3号掲載
創立記念日に想う |
第9回 モンキー6巻2号掲載
河合雅雄先生をしのんで
|
第8回 モンキー6巻1号掲載
もうひとつの動物園
|
第7回 モンキー5巻4号掲載
雨降りの動物園で
|
第6回 モンキー5巻3号掲載
あなたはだあれ~個体識別
|
第5回 モンキー5巻2号掲載
スローロリス、神様からの贈り物
|
第4回 モンキー5巻1号掲載
たき火にあたる、ストーブにあたる
|
第3回 モンキー4巻4号掲載
おーい、キュータロウ
|
第2回 モンキー4巻3号掲載
キュータロウとミカン
|
第1回 モンキー4巻2号掲載
モップくんとザルバ様
|
(番外編)3巻4号 巻頭言
|
>>雑誌「モンキー」についてはこちら。ぜひご購読ください。
■イベント報告
2019年3月3日、竹下景子さんが日本モンキーセンターの親善大使に就任されました。
6月9日には、親善大使就任記念イベントとして、親善大使委嘱状授与式と、松沢哲郎所長とのトークショーを開催しました。
前日には、丸一日かけて園内をめぐり、各所で飼育員の話にじっくり耳をかたむけて、
差し入れとしていただいたスイカをサルたちがおいしそうにほおばる姿を観察されました。
風や日差し、におい、サイズ感など、その場にいないとわからない実体験を通し、目の前のサルたちが本来くらす森林に思いをはせる、
そんな「自然への窓」としての日本モンキーセンターの役割と魅力を、竹下さんのやさしい語りで存分にアピールしていただきました。
竹下景子さんには、日本モンキーセンターの心強い親善大使として、これからもさまざまな形で活動を続けていただきます。
「いつまで」と書かれていない無期限の委嘱状のもとに、各種イベントへの参加や、雑誌「モンキー」への執筆など、
今後の活動についてこちらのページに随時掲載していきますのでおたのしみに。