■京大モンキーキャンパス 記録サークルによる講演記録
京大モンキーキャンパスの受講生が、自主的に記録サークルを立ち上げました!
受講生しか聞くことができない講演の様子を、サークルメンバーの視点でレポートします。

 9/11(日)「サルの子育てと社会 -サルの人間科学‐」
  中道正之(大阪大学大学院人間科学研究科教授)
《講義抜粋》 動物の子育てには「接触型」「放置型」「追従型」の3つがある。ニホンザルなどの霊長類は、抱っこするという接触型の子育てによって他の動物社会とは違う変化をもたらした。手を使って仲間と優しく濃密に関わりあうことによって、ニホンザルの社会には確立された完璧な順位が見られる。人間の子育ての特徴は、この3つすべてを持っている多様さにある。そして、人間にできてサルにできないことは「ほめる」とう素晴らしい力にある。
 いきなり、わたくし事で恐縮ですが、今回の中道先生の講義を聞きながら、とってもご縁を感じていました。先生は1991年6月5日午後4時55分、41年間の研究生活でもベスト10に入るという、ニホンザルの出産の瞬間をとらえた写真を撮影されます。さらにその半年後、サルと人間とを比較するため、講義中にもたびたび写真で登場する先生のご長女が誕生します。実は、先生がその記念すべき写真を撮影した半年前、私の娘が生まれたというわけです。
 まだあります。生まれたばかりの人間の赤ちゃんが、物をつかむという把握反射。実は、結婚8年目にして恵まれたわが子を前にどうしていいかわからず、最初にしたことが手のひらに人差し指を乗せたことでした。すると先生のおっしゃる通り、小さな指でぎゅっと握ってくれたのでした。その人差し指の感触は、いまでもかすかに残っています。

 さて、本題です。先生はおもに、ニホンザルの子育てについてお話されました。レジュメもたっぷりあり、お話はとってもわかりやすかった。「これは、とってもまとめやすい」と思わせたのでした。
でも、あらためて振り返るとお話はとてもこなれているのですが、「さて、何をどう伝えたら・・・」と戸惑ったのでした。それは、霊長類学の「いま」に対して、先生がとても新しい言い方をしようとしていることにつながっているのかもしれません。

 順番にいきましょう。先生は動物の子育てでの母子の距離感には大きく三つあるといいます。一つは人やサルなどの霊長類が赤ちゃんを抱っこする「接触型」。そしてキリンなどが子どもを捕食者から守るため、水場などで子どもを常に連れ歩かない「放置型」。さらに、クロサイの赤ちゃんのように常に母親の周りを付いて回る「追従型」です。
 そして、「抱っこ」という子育てが、人や霊長類にのみ見られる大事な行動の一つであるといいます。クロサイもキリンももちろん抱っこをしません。抱っこして子育てすることや、手を使って子どもや仲間にかかわることが、霊長類の社会が他の動物たちとは違う変化をもたらしたというのです。


 その一例に、ニホンザルの毛づくろいをあげます。実はノミを取っているのではなく、シラミの卵を取っているのだそうですが、そのように手を使って仲間に優しく濃密にかかわり合うのはほかにはないというのです。また、そのことを通じ、ニホンザルの社会には確立された完璧な順位が見られるというのです。
さらに、先天的障がいを持って生まれたニホンザルについてもこう述べます。ニホンザルもチンパンジーの赤ちゃんも母親にしがみつかなければいきていけません。では、手のないニホンザルの赤ちゃんはどうやって生き延びるのか。
 健常個体の死亡率10%、障がい個体の死亡率28%でそのうち72%が生き延びるそうなのですが、母親が常に手を差し出して補ったり、ほかのおばちゃん猿からおっぱいをもらったりと、「社会的寛容さがあるからこそ、障がいを持って生まれてもその集団のなかで生き延びる」というのです。

 チンパンジーが死んだ赤ちゃんを見捨てずミイラ化しても連れ歩く姿は、霊長類関係の本で知られています。しかし先生は22年前、そのような行動はないと考えられていた原猿類のワオキツネザルについても、マダガスカル島で見捨てない姿を発見します。
 ただ、ワオキツネザルは死んだ赤ちゃんをうまく運ぶことができず、その場に置いて移動しては、また戻ってくるということを繰り返したというのです。4か月間にそんな事例を7例も発見したといいます。

 次々に登場するエピソードのなかでも印象的だったのは、米サンディエゴの動物園にいる子どもゴリラ「ジーア」でした。母親が虫垂炎の緊急手術で9日間入院したため母親と離れ離れになったジーアは、遊ぶ元気すらなく膝を抱えてうつ向いています。その背中を支えるのは、オスのシルバーバックの大きな背中でした。その写真は哲学的というか、なんというか・・・。ゴリラの社会の奥深さを知らせてくれます。

 先生は、われわれ人間の子育ては「接触型」「放置型」「追従型」の三つすべてを持っている多様さにあるといいます。そして最後に、人間にできてサルにはできない素晴らしい力をあげます。それは「ほめること」といいます。あるいは「あいさつ」や「うなづくこと」もほめることにつながるといいます。松沢哲郎先生の「想像する力」に親しんだ霊長類へのアプローチとは、また違った角度からの2時間でした。

文 : 京大モンキーキャンパス受講生 柴田永治

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