■京大モンキーキャンパス 記録サークルによる講演記録
京大モンキーキャンパスの受講生が、自主的に記録サークルを立ち上げました!
受講生しか聞くことができない講演の様子を、サークルメンバーの視点でレポートします。

 
 10/9(日)「動物たちの心の世界」
  友永雅己(公益財団法人日本モンキーセンター学術部長・京都大学霊長類研究所教授)
《講義抜粋》 比較認知科学は「こころはいかに進化してきたのか」を探求する学問で、これまで社会的環境に重点を置いて研究されてきたが、友永氏は生態環境や物理的な環境も大切であると説く。高い樹上でも生活するチンパンジーは、その身体能力ばかりでなく、そうした環境の中で認識する能力が長い時間をかけてチンパンジーの「こころ」をなしてきたからだと説く。そうした視点から、霊長類学者としてここ近年、霊長類にとどまらず、ウマやイルカ、ヤギやリクガメにまで研究対象を広げ、相対化したこころの動きという視点から比較認知科学を見直している。
 友永先生の講義は、いっけん簡単そうに見えて、実はとても難解でした。というのも、「こころの動きの相対化」という、私自身はこれまで、ちょっと考えてもみなかったことを、先生はどうやら本気で研究されようとしていることに理解が及ばなかったからだと思います。
 霊長類学者が馬やイルカの研究にたどり着くのはともかくとして、モンキーセンターにいるヤギやリクガメにまで手を広げて研究対象とするというのは、講義の中でのちょっとした冗談か、はたまたリップサービスなのかと思っていました。ですがどうやら、先生は本気のようなのです。そこのところを、しっかり押さえていなかったばかりに、先生の講義はとっても難解になってしまったのだと、いまさらながら思うのです。

 そのことに気づいたのは、復刊された「モンキー」2号で先生がお書きになった「チンパンジー、イルカ、そしてウマからみた世界」に目を通してからです。先生はこのようにお書きになっています。
 比較認知科学とは「こころはいかに進化してきたのか」を探求する学問で、「生き物が環境に適応してきた結果として進化してきた」というのですが、友永先生はこの四半世紀ほど強調されてきた社会的環境の重要性に対して、「生態環境や物理的な環境もけっこう大事なのではないかと思い始めている」というのです。

 その一例として、霊長類研究所にいるチンパンジーは15mの高さに張られたロープを二足立ちで軽々と移動しますが、「そこで発揮されている身体能力や環境を認識する能力(つまりこころ)は、とてもユニークである。森林という環境がそのユニークな心を作ったのだ」と指摘されます。
 また、超音波を発信してその反響の強弱や返ってくる時間で世界を見ているイルカは、実はとても視力が弱いのだそうですが、そのイルカが視覚に頼って世界を見ようとすると、人やチンパンジーが見るのと同じような「かたち」が目の前に広がっていることを研究を通じて知ったそうです。そして先生は、「これは私にとっては新鮮な驚きでもあった」と述懐しています。

 これまた、講義のなかで「ちょっと、冗談か」と思っていた「ウマ目線」や「イルカ目線」についても、先生は本気で探求されているのだと思います。そして、「異なる世界に適応していても、『見た世界』のエッセンスはほ乳類の間ではとてもよく似ているのかもしれない。問題は、その世界からの情報をどのように解釈しているか、という『認知』にあるのだろう」と述べています。




 つまり、「ヒト目線」で動物を解釈するのではなく、動物がどのように世界を見ているかをきちんと理解したうえで、最終的に人のこころがどのように進化してきたかを探求しようという、途轍もなく困難なチャレンジをしようというのが、友永先生の研究のモチーフではないかと思えるのです。

 そう理解したうえで、講義のメモをあらためて見てみます。例えば、チンパンジー、ウマ、イルカの図形の認識の仕方について、チンパンジーとイルカはとても良く似ていると言います。そして、陸上と海中というまったく異なった環境下にある動物が、良く似た「かたち」で世界を区切っていることについて、「場合によっては地球という環境の側に何か理由があって、そういう風に見ることしか許容しない形で進化してきたということが、もしかしたらあるんじゃないか」と述べられています。

 なかなか理解できなかった講義を振り返っているうち、先生がウマやイルカを研究するのは、バリエーションルートから霊長類を研究しようとしているのではないかと考えていました。しかし、どうもそうではなさそうです。ウマやイルカ、はたまたヤギやリクガメにまで広げたパイオニアワークなのではないかと思うようになりました。

 それにしても、チンパンジーのタッチパネルと同じように、大型スクリーンに鼻先をつけて課題を解くウマのビデオ画面は健気でした。正解するとご褒美にバケツに乾燥人参を与える音が「カラン」と響くのですが、講義中、何度も映し出されるその映像の意味が理解できないまま、先生の話より「カラン」という音に気を取られていたことを思い出します。講義のなかで先生は「『馬の耳に念仏』などと言うのは、ウマに失礼」とおっしゃっていたのですが、どうも今回の講義は、私にとってはその「念仏」だったと赤面する思いなのです。ああ・・・。
文 : 京大モンキーキャンパス受講生 柴田永治


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