■京大モンキーキャンパス 記録サークルによる講演記録
京大モンキーキャンパスの受講生が、自主的に記録サークルを立ち上げました!
受講生しか聞くことができない講演の様子を、サークルメンバーの視点でレポートします。
 
 10/8(日)「類人猿の心と行動」
  平田聡(京都大学野生動物研究センター教授)
 夏の林美里先生の講義をよんどころない事情で欠席してしまい、わたしにとっては久々に聴くチンパンジーの講義。 しかも、今回は熊本サンクチュアリの所長も務める平田先生です。
 考えてみると今年の6回の講座は霊長類の研究者と、宇宙から海洋そして出産まで、異分野の先生の講義を交互に楽しめる講座となっています。 今更ながらその妙味にはまっていることに気づきます。こうなってくると、来年はいよいよAI(人工知能)の登場か!?と、勝手に想像が膨らみます。

 さて、その平田先生の講義は、ヒトのココロをわれわれの隣人である類人猿から推しはかるという、霊長類研究が本来持つ困難さのありようを紹介されます。
 「『心』や『行動』は化石に残らないので、いまいる人間以外の動物種を対象に比較研究してヒントを見つける」しかない、というわけです。
 「人間とは何か?」「人間はどこから来たか?」「人間社会はどこに向かうべきなのか?」「人間の心や行動はどのように形成されてきたのか?」 -------その生物学的・進化的基盤を探る・・・。今回のテーマがスクリーンに映し出されます。
 では、そのような研究はどうやって実現されてきたのでしょう?

 で、先生はこれまでに行ってきた、チンパンジーたちの協力行動や利他行動、自己認識や記憶、駆け引き・あざむきといった観点から、 これまで取り組んできた実験をたくさんのビデオ映像を織り交ぜながら紹介されます。


 たとえば、松沢哲郎先生と30年以上も研究を共にしてきたあのアイが、運動場で仲間のプチを高さ8mから突き落とすシーンがあります。
 「すばらしい知的を発揮するアイでさえ!」と一瞬たじろいでしまうのですが、平田先生はチンパンジーの心を探るうえでアイがプチを突き落とすとき、 「後ろから迫ればバレない」「落とした後で人ごみに紛れればバレない」ということがわかっていたか?と疑問を投げかけます。
 別のビデオでは、研究者が運動場にバナナを隠して、それを見ているチンパンジー(目撃者)と、隠された場所がわからないチンパンジーとの間で、 どのような駆け引き・あざむきがあるかを探る「宝探しゲーム」が紹介されます。  そして、「目撃者はバナナの場所を知っているということを後者は分かっていたか?」 「後者はバナナの場所を知らないことを、目撃者は分かっていたからダマせると思ったか?」という疑問を投げかけます。

 先生は「いずれも、当のチンパンジーに聞いて見ないとわからない」「まあ、聞いてみても答えてくれないから、結局わからない」と、 いささか心もとないコメントを残されるのですが、言葉が話せない「隣人」が相手なのですから、結論を急いでも仕方がないということなのでしょう。

 それ以上に興味をそそられたのは、先生がそのような「隣人」を相手に、問いを投げかけるために考案してきた各種の実験方法なのでした。
 たとえば、協力行為を調べるために使う台とロープの実験。最初は重さ100キロ以上の石の下にバナナを隠し、チンパンジー同士の協力を調べるのに使ったのでしたが、 平田先生はチンパンジーの手の届かない場所に、ピーナツを置いた二つの台を用意します。
その台にはロープが通され、二人のチンパンジーが協力しあってロープを引けば、台を手繰り寄せてピーナツを得られるというわけです。
 実験装置としては単純ながら、それまで誰も試みたことのないこの方法は、海外の研究者から「ヒラタ・メソッド」と呼ばれ、 そこからはさらに協力行為について精密に調べるバリエーションが生まれています。
 講義録としてはいささか反則気味ですが、半数以上の聴講者が帰ってしまった昼食後の質問タイムでこんなやり取りがありました。

 質問 「松沢先生もどこかの著書で“世界で初めての実験”と紹介していますが、どんな時にそうした実験を思いつくのですか?」
 平田 「ぼく自身よくわかっていないが、一つ言えるのは経験。毎日、頭の底で考えていて、そのうちに『こういうのは』というのが出てくる。 一種、職人芸に近いもの。経験値が上がれば成功率もあがるという感じですかね」
 質問 「実験をするために『覚えさせる』こと自体、自然な行動を見ることにはならないのでは?」
 平田 「そこは野生下と飼育下での攻略方法の違い。人の手が加わることは不自然だが、手を加えることによって潜在的な能力がどこまであるかを見ることができる。 からだの丈夫な人は実験室とフィールドワークが半々だが、アフリカで毎回お腹をこわすわたしは9対1で飼育下での実験。
フィールドワークで勝負しても勝ち目はないですから」と笑わせます。
 日本の霊長類研究の第一世代を今西錦司、その教え子らの松沢先生たちを第二世代とすると、平田先生たちは「第三世代」といえそうです。 「人間とは何か?」「人間はどこから来たか?」といった根源的な問いに対し、新しい世代は隣人たちの観察からどのような回答を引き出そうとしているのか、 地道な積み重ねながら、今後も目が離せないことが十分伝わる講義となりました。

文 : 京大モンキーキャンパス受講生 柴田永治

 
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