■京大モンキーキャンパス 記録サークルによる講演記録
京大モンキーキャンパスの受講生が、自主的に記録サークルを立ち上げました!
受講生しか聞くことができない講演の様子を、サークルメンバーの視点でレポートします。
 
 6/10(日) 「野生動物の食事と腸内細菌:なぜこんな食べ物を食べるのか、どうやって栄養にするのか」
  牛田一成(中部大学創発学術院)
 「きょうのお話は野生動物の食べ物と腸内細菌の話です」。 牛田先生の講義のタイトルに、聴講生のわたしは「ふむふむ。ホイデホイデ?(三河弁ですみません。それでそれで、です)」と滑り出しは好調です。 先生が生化学の研究に進んだのは「野生動物は、人間が食べない、とんでもないものを食べるのですが、どういう仕掛けで栄養にするのか関心を持った」 とおっしゃいます。
 でも、その次に出てきたグルコース(ブドウ糖)あたりから怪しくなります(というより生化学の基礎知識があまりに乏しい)。 それに、P、Ca、Mg、Naといったミネラルの化学記号・・・。短鎖脂肪酸の主成分という酢酸、プロピオン酸、酪酸となると、もうお手上げです。

 それで講義終了後の質問タイムに思い切って「直接、腸内細菌の話とは関係ないかもしれませんが、現生人類が誕生してからこの20万年、 海辺から遠ざかった内陸部などで、われわれの祖先はどうやって塩分を摂ってきたのですか」と、 講義中に出てきたナトリウムに絡めて質問をぶつけてみました。
 すると、先生の答えは明快です。「全然、専門家ではありませんが、考えたことがあるのでちょっと話します」と前置きしたうえで、 狩猟採取で肉食をしていた祖先たちは獲物から必要な塩分やミネラルが摂ることができたので、ナトリウムは必要ないというのがその答えでした。
 「そっか~。よかった」。何となく動物たちのように土をなめたりする祖先の姿を思い浮かべていたので、ホッとしました。 でも、その次に意外な言葉が続きます。


 「農耕が始まった1万年ほど前から、デンプンを摂取するようになると、逆に塩が必要になった」 「デンプンを分解して、グルコースとして吸収するときにナトリウムが絶対必要になる。 デンプン食が主体になると、どうしてもナトリウムが足りなくなる」というのです。
 つまり、アウストラロピテクスより後の直接の人類の祖先が出てくる時代は、歯石や歯の形状から明らかに肉食化していたため、 人類の祖先が森を出た300万年前ごろから農耕が始まる間までの299万年間は塩が必要なかった。 その代わり、この1万年の間に塩が欠かせなくなったというわけです。
 「専門家でない」と言いながら、先生はサハラ砂漠の南のサヘールという所から、もともと野生のイネ科の植物で農耕が始まったことや、 本来、人が住んでいない所に突然巨大な都市ができ始めたこと。 さらに、文化人類学的にも塩が決定的だったことはわかっていて、どうもサハラ砂漠を越えて塩を運ぶ道ができたことで、 ガーナの北部では金と塩が同じ目方で交換されていたということなど、奥深い知見が次々に紹介されます。
 「う~ん、そういうことだったのか」。何となくそんなところから今回の講義の録音を聞き返してみると、 先生は講義中にも随所に興味深い話を交えていたことがわかります。
 例えば、ガボン共和国の現地名で「ザンザラ」という木の話。この木には毒があり、 村の人が木を削って川に投げ込むと魚が死んで浮いてくるというのですが、これが枯死すると、 生きていた時より5倍も多くナトリウムを溜め込むというのです。
 ゴリラが枯れ木をなめているので、先生たちもなめてみたのですが、ナトリウム摂取が過剰な舌先には何の味も感じません。 しかし、高さ20メートルほどもあるこの枯れ木が三週間もすると1本丸々なくなっているといいます。
 それでカメラを仕掛けてみると、ゴリラはもちろんゾウまで夜中にやってきて木をブチ倒していたそうです。 その森にはナトリウム源が他になく、この木に塩が溜まっていることが推測できたというのです。
 先生はもともと文科系の人文地理に興味があったそうですが、16歳のときに霊長類学者の伊谷純一郎先生の著書「ゴリラとピグミーの森」を読んで、 「これはいかん。こういう世界に足を踏み入れねば」と京都大学進学を志し、山岳部に所属して2度のヒマラヤ遠征にも参加したそうです。
 博士課程に進んだ後は、フランスに留学して本格的な腸内細菌の研究に入り、紆余曲折を経ながらも、 2000年以降、松沢哲郎先生の導きで念願のアフリカのフィールドワークにたどり着いたといいます。
 講義の合間には、今年3月に放映されたNHKのドキュメンタリー番組も映し出され、先生たちがアフリカの密林に踏み込み、 「幻のゾウ」といわれるマルミミゾウの新鮮なうんちを探してジャングルを歩き回る奮戦ぶりも紹介されます。
 分子生物学の技術的な発達もあり、実験室での生化学・分子生物学の解析と、 試料を求めて全地球規模で辺境の野生動物や微生物を追うフィールドワークが直結し、新たな知見が続々と誕生している一端を垣間見ることができます。

 講義の締めくくりでは、動物園で飼育されている、特に草食動物のエサについて、野生での状態とあまりにかけ離れているため、 飼育下の動物の栄養学の研究会を今秋にも立ち上げようとしていることなどが紹介されます。

 それにしても、講義録というにはあまりにズサンな内容に我ながら呆れてしまいます。 そういえば思い出しました。高校1年の生物の授業でいきなり赤点をとったことを・・・。 そして今回、講義録をまとめようとネットで様々に検索するうち、一番参考になったのが 「でんぷんがブドウ糖となって体に消化・吸収されるまでのしくみ」というサイトでした。
 しかも、それが中学2年生の理科で学ぶ内容と知り、二度目は茫然自失です。 ポパイ風になら、「ワォ、何てこった」とでも言うべきなのでしょう。嗚呼・・・。

文・写真 : 京大モンキーキャンパス受講生 柴田永治

 
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