特別展「海とサルの交わるところ」
第1章 海とニホンザル
四方を海に囲まれた日本には、日本固有種であるニホンザルが生息しています。
中でも幸島(宮崎県)や金華山(宮城県)など、島に生息するニホンザルは群れの動向を追いやすく、恰好の調査対象となってきました。
第1章では特別展の導入として、海辺の調査地で観察されてきたニホンザルと海の関係をご紹介します。
青森県・下北半島
北緯41度30分、本州最北端青森県下北半島は、東に太平洋、北に津軽海峡、西に平舘海峡、南に陸奥湾と4つの海に囲まれています。地球上でヒトを除く霊長類が生息する最北の地、下北半島に生息するニホンザルは「世界最北限のサル」として名高く、冬季、雪の中でくらす姿からスノーモンキーとも呼ばれています。
最北の生息地
海岸線の断崖絶壁や急峻な岩場など複雑な地形の下北半島の森は、ブナ、ミズナラ、イタヤカエデといった落葉広葉樹の林に針葉樹のヒバが群生するヒバ―ブナ混合林です。ただ、戦後の大規模な伐採、植林でスギの人工林と薪炭用の雑木林に大きく変貌しています。
海で採食する
風のない波の静かな日には、波打ち際まで下り、海の恵みを堪能します。海岸線のハマナスの花や実、ハマエンドウの葉などの植物、海岸線に打ち上げられた海藻類、タマキビ、カサガイといった貝類。それに漂着した野菜や果物にも目がありません。
海岸線で一休み
寄せては返す波の音、頬に優しくささやく南風、沖を走る漁船のエンジン音。採食、移動と海岸線を利用するサルの群れ。岩の上でグルーミングすることも珍しくありません。眼下に見下ろす大海原、サルの目にはどのように映っているのでしょう。
宮城県・金華山
金華山は宮城県牡鹿半島の先端に位置する周囲約26kmの島です。その全域が神域として守られており、餌付けされていない野生ニホンザルの本来の姿を観察できる貴重なフィールドです。
新潟県・笹ヶ峰
妙高山山麓、標高約1,300mに広がる笹ヶ峰は、モンキーセンターと京都大学のチームが最近開拓した調査地です。2025年5月、調査地内の泉で複数のサルが泳ぐ姿が目撃されました。
長野県・上高地
北アルプス南部、梓川上流の標高約1,500mに位置する上高地は、ニホンザルの生息地としては最も寒い場所の一つです。無雪期には年間100万人以上が訪れる山岳景勝地でもあります。
長野県・地獄谷
険しく切り立った崖と山々に囲まれた地獄谷には、古くからニホンザルが生息していました。地獄谷野猿公苑は1964年に開苑し、彼らの生態を間近で観察できる場所となっています。
静岡県・波勝崎
調査地の概要:南伊豆に位置する波勝崎では1953年頃からサルの餌付けが試みられ、1957年に波勝崎苑が開苑、現在は波勝崎モンキーベイとして開園しています。ふつうサルが海岸を利用するのは幸島や金華山のような島の環境に限られますが、波勝崎では海岸でくつろぐ姿を観察できます。
海岸の生息地
100頭を超える群れがほぼ毎日、エサを食べに海岸にやってきます。与えられたエサも食べますが、海岸で食べものを探すことも。食後にくつろいだり、コドモたちは遊んだりしながら夕方まで滞在し、山に帰っていきます。
兵庫県・淡路島
淡路島モンキーセンターは、兵庫県淡路島南部に分布する野生ニホンザルへの餌づけを始めた1967年に開苑しました。ほかの地域のニホンザルと比べると寛容性が高いことが特徴とされ、平和主義的な社会関係や個体間距離の近さなどさまざまなエピソードがあります。
高知県・大堂山
高知県のほぼ西端、ダイビングなどで有名な柏島に向かう途中の大月半島に、野生ニホンザル2群およそ100頭未満が生息しています(大月町役場提供:2018年の調査結果)。ここでは1957年から観光目的での餌づけが始まり、大月町の管理により「大堂お猿公園」が運営されています。現在はあまり積極的な餌付けはなされておらず、お猿公園内でサルが見られるとは限りませんが、周辺の道路や山林で野生のサルがよく目撃されています。
宮崎県・幸島
幸島は、宮崎県南部に浮かぶ、周囲約3.5㎞の小さな島です。「幸島サル生息地」として1934年に国の天然記念物に指定されており、ニホンザルたちが水でイモを洗って食べる文化的行動が発見されるなど「日本の霊長類学発祥の地」としても知られています。



























