特別展「海とサルの交わるところ」
第2章 海と世界のサル
世界に目を向ければ、ニホンザルよりももっと海を積極的に利用しているサルもいます。
植物だけでなく、さまざまなものを食べる雑食性の強いサルのなかまは、生息地内にアクセスしやすい海辺の環境があれば、採食場所として利用します。マカクのなかまや、オマキザルのなかまなどがそうです。その探索方法や食べ方は、種や地域によって特徴があるようです。採食場所としてではなく、夜の泊り場として水辺を利用するテングザルのような例もあります。
ここからは、海と世界のサルの関係を見てみましょう。
カニはもちろん!貝も魚もナマコも食べる!【カニクイザル】
その名のとおりカニを食べるカニクイザル。ふだんの食べ物は植物が中心ですが、海辺でくらす群れは積極的に海産物も利用します。カニ、貝類、魚類、ナマコまで・・・
カニクイザルは泳ぎも得意で、“犬かき”のような泳ぎ方でスイスイ泳ぎます。浅い海なら潜って海底の食べ物を探すこともあります。
いざとなったら飛び込んで逃げる!【テングザル】
東南アジアのボルネオ島のみに生息するテングザルは、夜はきまって水辺の木の上に集まって眠ります。夜の森ではウンピョウなどの捕食者が活動していますが、危険が迫れば水に飛び込んですぐに逃げることができます。
道具を使って貝もカニもいただきます【オマキザルのなかま】
海との関わりが深いのは、アジアのサルだけではありません。中南米の海辺に生息するオマキザルのなかまも積極的に海産物を利用し、カニや貝などの硬いものは道具を使って割る行動も見られます。さすが“南米のチンパンジー”とも呼ばれるオマキザルですね。
実は重層社会だった!?
マントヒヒなどで知られる「重層社会」は、小さな群れが離合集散しながら、時により大きな集団を作るという重層的な構造を持つ社会です。2024年、テングザルが霊長類としては珍しく、父系的な基盤を有する重層社会を形成している可能性を示唆する発表がありました。長期にわたる直接観察や、糞の遺伝子解析による成果ですが、川辺に集まって眠るテングザルだからこそ、群れ同士の位置関係を観察しやすかったという面もあるでしょう。私たち人類の社会進化を考える上で重要な手がかりを与えてくれました。
石器を使って海産物を食べる、タイ・レムソン国立公園のカニクイザル
タイ南部に位置するレムソン国立公園のPiak Nam Yai島には9群200頭弱のカニクイザルが生息しています。全ての群れで石器を使って海産物を割るなどして食べる行動が見られ、食べているものを食べたところ、47種(動物43種、植物4種)も同定することができたそうです。
そのうち、日本で入手可能な種、もしくは近縁種を3つの水槽に展示しました。サルたちがどのように探し捕まえ食べているのか、想像してみましょう。
カニクイザルの海 潮間帯の岩場
潮の満ち引きに合わせて、1日2回訪れる「干潮」。海辺でくらすカニクイザルは、この時間帯に合わせて海辺を訪れ、カニや貝、時にはナマコまで採食します。
カニや貝には、硬い“殻”があります。カニクイザルは小さなものなら歯で$5699み砕きますが、大きく硬いものは石を使って割ることもあります。
カニクイザルの海 マングローブ林
海水と淡水の入り混じるマングローブ林では、汽水でも生育できるヒルギなどの植物が育ち、タコ足のような支柱根や地上に突き出た呼吸根など、複雑な環境が多様な生物を育みます。
ノドジロオマキザルの海産物利用
パナマ南西部のコイバ国立公園に生息するノドジロオマキザルは、森では手に入らない貝やカニなどの海産物を海辺で採食しています。かれらが潮間帯をどのように利用しているかを調べるため、2017年~2023年の間、海辺を中心に設置した137台のカメラトラップにより、ノドジロオマキザルが海辺に現れた時刻が記録されました。潮汐の時刻との対応を解析した結果、ノドジロオマキザルが潮が引くタイミングにあわせて海辺を訪れることがわかりました。
ホオヒゲオマキザルの道具を使った海産物利用
ブラジルのアマゾン沿岸域には、メリアン川周辺を境に、北にフサオマキザルが、南にホオヒゲオマキザルが生息しています。2004年~2008年の調査で、フサオマキザルはさまざまな環境に広く生息するのに対して、ホオヒゲオマキザルの生息はマングローブ林に限定されることがわかりました。
ホオヒゲオマキザルはマングローブ林でカニや貝類などの生物を捕食します。道具を使って硬い殻を割る、待ち伏せをして捕食するなど、さまざまな行動が観察されました。
マングローブ林の減少
東南アジアの海辺ではアブラヤシのプランテーションやエビ類の養殖場が広がり、テングザルなどの野生動物が生息できるマングローブ林や川辺林は激減。生物多様性が急速に失われつつあります。日本はパーム油やエビ類の主要な輸出先となっており、無関係とはいえません。
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証やMSC認証を受けた商品を選ぶなど、私たち一人ひとりにできることもたくさんあります。























